【一無禁煙】
喫煙の恐ろしさ
◎「一無」を怠ると喪失歯も増える
喫煙者のいる部屋の汚れは、非喫煙者におけるそれと比較して、明らかに著しいことが知られています。この要因は紫煙に含まれるタール成分によります。
▼喫煙が及ぼす歯への影響
さて、このタールを含んだ紫煙をダイレクトに吹きつけられる口腔内、特に歯における影響は甚大です。その証拠は喫煙者の歯の汚れが顕著に示しています。しかし、このような歯に及ぼす紫煙の直接的な影響に加えて、喫煙が全身に及ぼす影響の中で、最近明らかにされていることは、喫煙者では生体防御の役割を担っている白血球の機能低下がみられること、ニコチン、一酸化炭素の影響下で抹消の血流障害が見られることなどです。これらは歯を養い、歯を育てる機能に対して確実に悪影響を及ぼします。その結果、起こってくる異常の最たるものが歯周病(歯槽膿漏)です。
▼喫煙が招く歯周病
歯周病は「虫歯」と並んで歯にまつわる二大疾患です。虫歯は細菌の侵食によるものに対して、歯周病は歯茎からその症状はスタートします。そして、これは放置しておくとやがて歯を支える顎の骨が溶け、歯はぐらぐらとなり、そして抜けていきます。歯茎に始まる症状は、歯肉炎によります。しかし、この炎症症状は多くの場合痛みも無く、静かに進行していきます。このため、気づきにくく、手遅れになる例が数多く見られます。このような形で起こってくる歯周病は、昔から喫煙者ではより多いことが知られています。喫煙と歯周病との関係を調べた最近の米国の論文によりますと、やはり喫煙者は非喫煙者に比較して歯周病に罹っている割合が高く、その程度も重症であるとしています。しかも、その傾向は20代、30代の比較的若い世代から見られていることが注目されます。口内の清掃、すなわち歯磨きの程度が同程度に行われていたとしても、喫煙者では歯周病の罹患がより高いことを、この研究は併せて明らかにしています。また、歯周病の治療に際して喫煙者における治療効果は、非喫煙者に比べてこれも明らかに悪いことが示されています。このような結果をもたらしている理由については、紫煙の直接作用というよりは、喫煙による全身的な影響によるものと理解されています。
▼喫煙と喪失歯の増加
本来、歯は生涯にわたってその機能を保ち続ける性質をもっています。しかし、実際には多くの人が40歳を過ぎる頃から一本、二本と歯を失っています。現在わが国で、55歳で保有する歯の数は平均20本、60歳で16本、70歳で8本、そして80歳で4本とされています。このような歯の喪失原因の多くは、歯周病によっています。そこで歯周病を予防して、80歳に至っても20本以上の歯を保つよう「80−20運動」(日本歯科医師会)が展開されています。これを果たす上で「一無」としての禁煙が重要です。喫煙者が非喫煙者よりも早く歯を失うという点については、スウェーデンからの報告が次のようなデータを示しています。すなわち、38〜60歳の女性、1,462名につき、10年間の観察期間中、失われた歯の本数は、喫煙群で平均3.5本、これに対して非喫煙群では、2.1本だったということです。「一無」を守って歯の衛生と、歯の健康を守りましょう。
◎未成年への禁煙対策
▼世界禁煙デー
1989年(平成元年)に開かれた第42回世界保健機関(WHO)の総会において、その年の5月31日が「世界禁煙デー(World No-Tobacco Day)」とされました。以後、毎年世界禁煙デーのためのスローガンが設定され、世界中で禁煙を中心にしたタバコ対策のための活動が展開されています。わが国におけるタバコ対策の基本的な考え方は、未成年者の喫煙防止の徹底、非喫煙者に対する受動喫煙の影響を排除・減少させるための環境作りに置かれています。厚生省も、タバコの「有害性」と「中毒性」を行政施策に反映させるために「21世紀のタバコ対策検討会」を設けました。
▼未成年者喫煙禁止法
世界禁煙デーのスローガンの一つに「Growup without Tobacco」すなわち、すべての子供がタバコなしで成人することを願うというものがありました。わが国には明治33年に作られ、昭和22年に最終改正された「未成年者喫煙禁止法」があります。その第一条の記述は「満20年に至らざるものは煙草を喫することを得ず」としています。喫煙および受動喫煙による健康障害を考える時、この法律を遵守し、未成年にはタバコを吸わせないのは無論のこと、その煙を吸い込ませない環境作りはすべての成人の責任であることを強く自覚し、これを推し進めることが肝要です。このところ、これらをバックアップする上で有用な対策が次々と打ち出されています。その第一は「タバコのテレビ広告の全面禁止」、第二は「国内を就航している旅客機の全席禁煙」、第三は「非喫煙に有利な保険」の登場です。今後は、未成年者にタバコを売らないのは無論のこと、自動販売機の全面撤去が強く望まれます。
▼未成年者における喫煙の怖さ
未成年者による喫煙は非喫煙者との比較は無論のこと、成人後に喫煙を開始したものに比べても、ガンや心臓病などのリスク(危険)の高まることが明らかにされています。例えば肺がんの場合、20歳未満で喫煙を開始したものは、30歳以上で喫煙を開始したものに比べても約4倍強、そして非喫煙者に比較すると6倍近くも肺がんによる死亡率の高まることが明らかにされています。喫煙はその開始年齢が早ければ早いほど、嗜癖(中毒)に陥りやすいことも注目しておかねばなりません。中毒性をもたらす要因は「ニコチン」によります。発ガン性は「タール成分」に含まれる発ガン性物質や発ガン促進物質によります。加えて、喫煙がもたらす「一酸化炭素」は全身の臓器、組織に酸素欠乏をもたらすことで健全な生育を阻害します。未成年者は無論のことすべての人が、これら「タバコの三悪」からフリーであることが望まれます。このような実態があるのにもかかわらず、たばこ会社は多くの機会を捉えて若者と女性をターゲットにタバコの広告を展開しているのは許しがたいことです。10代でタバコに手をだした者の場合、喫煙本数が100本に達する中で常習喫煙に陥りやすいことが知られています。すなわち、このような者の2年後の喫煙率は80%と高く、20年を経た時点でもなお50%だということです。ここにも未成年者の喫煙の怖さをみることができます。
◎光を失わないために
▼増加している老人性黄斑変性症
老人性黄斑変性症は網膜の一部に障害が起こり視力低下を招く眼の病気で、重症の場合には失明に至ります。この病気の治療法は今のところ見つかっていません。過去、喫煙者の多かった米国では、現在高齢者を中心に170万人の患者がいるといわれています。そして、65歳以上の失明原因のトップがこの病気だとされています。わが国でも近年、老人性黄斑変性症による視力障害者が急増しているとして注目されています。
▼看護婦3万2,000人の成績から
米国内十州で1980年の時点で、50〜59歳の「看護婦健康研究」に参加した登録看護婦3万1,843人について、喫煙と加齢に伴なう老人性黄斑変性症の発症率との関係が12年間に及ぶ前向きの追跡調査として行われました。その結果、調査期間中に平均して一日25本以上の喫煙を続けていた女性では、老人性黄斑変性症への罹患率が非喫煙者と比較して2.4倍も高く、また平均15〜24本の女性でも1.4倍高いことが明らかにされました。
▼男性医師2万1,000人でも
一方、男性における喫煙と加齢に伴なう老人性黄斑変性症との関係も「医師健康研究」に参加している米国内男性医師2万1,157人を対象に、やはり前向きの調査が7年間以上行われ、この中で視力喪失に至った老人性黄斑変性症が2,608人出たとしています。この研究では、一日の喫煙本数が20本以上になると失明の危険度はおよそ2.5倍になることを示しています。以上のように、わが国でもその増加に対して警鐘が鳴らされている老人性黄斑変性症は、喫煙との関係が明らかです。このようなことから、快適な老後を過ごす上で、光を失わないよう「一無」(禁煙)の実践を強くお薦め致します。
『健康パスポート2000』より抜粋
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